線路上空人工地盤を活用した会員制貸菜園(レンタルファーム事業)の開発・企画
(東京都世田谷区)
東京都世田谷区の成城地区において、小田急電鉄(株)が鉄道の連続立体交差事業によって地下化された駅施設等の上部を覆蓋し、その一部を会員制の菜園として事業化。
小田急電鉄小田原線では複々線化事業と連続立体交差事業を一体的に進めており、本地区でも平成6年12月に複々線化工事に着手しました。
事業は基本的にオープンカットで進められていますが、成城学園前駅周辺では駅・線路上空に駅ビルの整備と一部覆蓋化が行われています。
この覆蓋の一部分を活用して、菜園事業を行おうとしたものです。
東京山の手の高級住宅街の駅前で、線路上空部を緑地・菜園化し、作物を育て、収穫し、料理して皆で食べるという一連のプロセスを楽しむ空間として全体をプロデュースする土地活用事業。
成城学園前駅駅西の線路上空人工地盤については、駅ビルに近いエリアは世田谷区からの要望もあって約2,000台の駐輪場と約10台の駐車場が整備されています。
残りの約5,000m2について、用途地域指定(一種低層住居専用地域)、荷重条件(550s/m2)、近隣環境のセキュリティ面を確保するため不特定多数の人々の利用は難、等の諸条件を勘案し、各種事業展開の可否について検討がされました。
この結果、事業採算性は低いものの地域環境と共生できる都市型会員制貸菜園事業(レンタルファーム事業)を選択することとになりました。
この土地利用については、東京都および世田谷区の見解として「線路上空人工地盤は屋上施設に相当するので、農地法適用外である。よって、本事業は農園ではなく屋上緑化施設とみなす」との回答が得られ、レンタルファーム事業が可能になったことがおおきな要因です。
本プロジェクトの特徴は、成城という「ブランド力」の高い地域性を活かして、企業の「沿線価値の向上」及び「沿線の自然環境保全貢献」をともに可能とする、環境貢献型の土地利用活用を図ったことにあります。
事業内容でもある貸菜園に関しては、従来の市民農園が対象としていた中高年齢の男性をターゲットとするのではなく、女性層を対象として、「耕す・育てる・料理する」新しいライフスタイルを提案、さまざまな会員サポートを行っています。
アグリス成城の事業スキーム
本プロジェクトは、土地区画整理事業+再開発地区計画による土地・基盤の整備・整序と、南海都市創造(株)と(株)高島屋による「なんばパークス」の整備事業で構成される。
 
●小田急電鉄株式会社 「AGRIS SEIJO」企画・開発担当

 「AGRIS SEIJO」がある人工地盤は、2004年11月複々線化・連続立体交差事業により、当社の成城学園前駅が地上から地下に移設させたことで生まれた線路上空人工地盤の大規模空地である。当時は人工地盤上の表面利用計画がなく、第3者が立ち入れない閉鎖的な空間であった。その後、2005年8月に世田谷区の要望を受けて約2,000台の駐輪場を先行オープンし、厳しい荷重条件(550s/u)の中で残りの大規模空地に対する有効活用策をめぐり種々検討を重ねたところ、都市型会員制貸菜園を2007年5月にオープンさせた。これにより、@ヒートアイランド現象の緩和、Aロハス生活の提案・普及、B会員同士、または近隣住民との交流の場づくり等が実現しました。
 本事業は、東京都および世田谷区から「線路上空人工地盤は屋上施設に相当するので、農地法適用外である、よって、本事業は農園ではなく屋上緑化施設とみなす」という見解をいただけたことで当社でもレンタルファーム事業が可能となりました。

●小田急建設株式会社 「AGRIS SEIJO」設計・施工担当
 本物件は鉄道上空人工地盤を貸菜園として利用するという、これまでコンクリートで覆われただけの空間を、環境に配慮した施設として整備する事業でした。元々人工地盤は表面使用を想定したものではなく、構造・設備など制約の多い条件の中でしたが、菜園として緑化することでヒートアイランド現象の抑制にもつながるなど、環境負荷低減に貢献する施設となりました。
 クラブハウスのデザインは木と土をテーマとし、壁面緑化を施すなど、菜園と伴に一体的なデザインを行い、成城にふさわしい景観を目指しました。
 この事業は単なる鉄道構造物の屋上緑化ではなく、今までとは全く違う空間活用形態という新しい事業の計画として設計・施工に取組ませていただきました。
●株式会社小田急ランドフローラ 「AGRIS SEIJO」ガーデンファーム設計・施工担当
 本開発にあたり、当社は造園業者として、菜園部分の基盤整備工事に携わって参りました。施工中最も苦心した点は、人工地盤の積載制限荷重(550kg/u)の中で、約1,300?もの客土を搬入する作業でした。客土はフレコンパック(1?入り)にて納品されましたが、そのままでは重すぎてスラブ面へ置くことができないため、一袋ずつレッカーで宙づりにした状態で開封し、小運搬に適した量を降ろしながら、人工地盤に搬入しました。最終的に客土搬入から施設設置に至るまで、実働85日間・延人工数約810人の労力を要した、将に人海戦術の施工となりました。
 当社は「AGRIS SEIJO」開業後も、管理運営者として貸し菜園ビジネスに取り組んでおります。今後も、この施設の持つ地域環境の向上という公共的側面を常に意識しながら、保有する価値を継続的に保てるよう励んでいきたいと思っております。
クラブハウス
▲ クラブハウス
クラブハウスセミナールーム
▲ クラブハウスセミナールーム
   
菜園
▲ 菜園
菜園
▲ 菜園
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